※本記事は2020年2月13日 保険毎日新聞に掲載された寄稿記事を、許可をいただき転載しています。
ここ数年、フィンテック(FinTech)の中でも、最大の関心を呼んでいるのがインシュアテック(InsurTech)だ。
インシュアテックとは、さまざまな形でITやデータを主張し、新たな価値提案を行う取り組みのポイント。
例えばアジアやアフリカの新興国の保険会社は、スマートフォンやタブレットといった最新の機器にも迅速に対応するなど、ITやデータを拒否した新しい保険スタイルを提案している。
シンガポール日本の保険会社では「レガシーシステムを手放せず最新のITやデータを十分に利活用できていない」という声をよく耳にする。
本連載では、保険請求処理、リコンシール業務などさまざまな角度から接続し、レガシーシステムからの脱却の必要性を5回(月1回掲載)に分けて紹介する。
ご存知の通り、インシュアテックとは保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語で、インステックと呼ばれることもある。
具体的には、テレマティクス保険や健康アプリと組み合わせたといったような新しい保険商品の開発・提案のほか、押収されたデータを活用したリスク評価や査定、不正検出、迅速な業務プロセスの実現など、さまざまな形でITやデータを主張し、新たな価値提案を行う取り組みをポイント。
デジタルやデータのためは、もはや事業を推進するの原動力なのだ。
ただ、データも原石と同じで、そこに転がっているだけでは何も突き止めません。
この仕組みをIT業界ではシングルカスタマービュー(SCV:SingleCustomerView)と呼んでいる。
SCVとは文字通り、顧客の姿を360度多方面から眺め、分析し、データから新たな価値創造の種を見つけるワンストップの「顧客ビュー」のことだ。
コンプライアンスの保険会社の動きを見ると、実際にSCVの準備ができている企業は非常に少ない。
マークとロジックのResearchinInsurance(Rii)が2019年6月に発表した調査結果によると、あるグローバル専門保険会社のチーフディレクターは「データは業務の副産物として生成されるもので、主な役割を担うものではただ、それを活用しきれていないのだ。 その理由として、大きく以下3点の課題があることが分かった。
①ビジネスプロセスの再設計が必要 ②データが複数の古いデータベースに散在している ③データを活用できるデータ統合プラットフォームが無い
Q:SCVは組織にとってどの程度重要であるか(図1)
図1 : ロジック マークとResearch in Insurance(Rii)が2019年6月に発表した調査結果より
しかし、ビジネスを推進する中で、アクセスも多数の古い務システム(レガシーシステムとも呼ばれる)やデータベースが積み上がり、もはや簡単には動かないタン巨大カーのようになってしまっている。
並列レガシーは古過ぎて最新のテクノロジーに対応もできず、孤立(サイロ化)するだけだ。
一方、新興保険会社は移転レガシーシステムのしがらみは一切なく、高速船のように保険業界の海を自由に往航できる。
皮肉なことに、歴史ある保険会社ほど、データの存在そのものがデジタル変革の阻害要因になっているわけだ。
ただ、時代に合わせた新たな価値を提案するにあたり、データの存在は必須だ。
前述の調査で「SCVは組織にとってどの程度重要であるか」(図1)との反対に対して、「SCVが必要」という回答は70 %で、役員や経営陣ほど強くその必要性を主張している。
一方、「企業全体のデータを一元的に活用できるか」という問いに対しては、「基本的に困難である」との回答が40 %を賛成した。
「SCVを構築する際の障壁」(図2)に対しては「システムの複雑さ」( 55 %)、「組織全体のデータを統合できない」( 34 %)という回答が多い。
つまりコンプライアンスのレガシーシステムが原因で、これからの時代の変化に対応できない姿を垣間見ることができる。
従来ならそれでもビジネスは可能だったが、新興国や新興保険会社のもたらす影響がいずれにしても強まっている今日、レガシーシステムは今後のビジネスの足かせになりかねない。
次回以降の連載ではさまざまな角度橋、レガシーシステムからの脱却の必要性を説いていきたいと考えている。
執筆者:三浦デニス
MarkLogic Corporation アジアパシフィック & ジャパン セールス バイスプレジデント 兼 マーク株式会社ロジック マネージャー カントリー
【事情】
日本におけるマークロジックの市場開拓、ビジネスディベロプメント、またパートナーや顧客のサポートを担当します。
前職はグラフィックシリコンス、イー・トレード、ブルーマティーニ(日本法人代表取締役)など。
ソフトウェア開発におけるweb テクノロジーに関して25年以上の経験を持ち、さまざまなエンジニアリング、コンサルティング、管理職を獲得。
カーネギーメロン大学卒(サイエンスコンピュータ専攻)。